解体することで見えたお墓の強度とおすすめしない施工方法

杉並区荻窪の石材問屋・大徳石材工業の大代(おおしろ)賢太郎です。

ここ最近、どの石材店様も「お墓の解体」を依頼されることが増えていることは周知のとおりだと思います。

特に、これから年末や年度末にかけては
「それまでにお墓を整理しておきたい」
「次の年間管理費を支払いたくない」
といった理由から、墓所を返還されるお施主様が多くなる時期です。

※はじめにお伝えしておきますが、「お墓の解体」という言葉よりも、一般の方には「お墓じまい」という表現のほうが伝わりやすいと思います。
ただし、実際には「お墓を終う」のではなく、自宅近くのお墓や永代供養墓などへ移す“改葬”がほとんどです。
そういった意味で、私は「お墓じまい」という言葉があまり好きではないので、意図的に使わないようにしています。ご了承ください。

弊社でも現在、お得意先の霊園で9件ほどの解体工事を依頼されており、年末までの完了を目指して進めています。

この霊園は現在こそ販売・管理を1社で行っていますが、開園当初は3社が関わっていたそうです。

そのため、お墓の施工方法も三者三様で、解体をするとそれぞれの「施工の違い」や「強度の差」がよく見えてきます。

例えば、下の写真のように、合口部分と目地の両方を変成シリコンコーキング(以下、コーキング)で施工しているお墓。

またこちらは、合口はエポキシ系接着剤、目地はコーキングを使っているタイプ。

さらにL字金具を採用しているお墓も…

そんな中で、今回もっとも解体が大変だったのが、「コーキングのみ」(正確には基礎と根石の間だけモルタル施工)の墓所でした。

特にコーキングを大量に使用しているお墓は、接着強度が非常に高く、粘りもあります。

目地に鉄製のクサビを打ち込んだり、バールで剥がそうとしても、なかなか外れません。

今回の墓所は、平成15年頃に建てられたもので20年以上経過していますが、

目地部分以外の経年劣化はほとんど見られませんでした。

それでも、東日本大震災や能登半島地震では多くのお墓が倒壊しました。

やはり自然の力のすさまじさを感じずにはいられません。

本来であれば、ここで終わりでもよいのですが――。

石材店様が実際に行っている施工方法の中で、一つだけ絶対におすすめしない方法があるので、それをお伝えしたいと思います。

発注をいただく際に「根石の下場」だけでなく「合口(合場)」まで荒らしてほしいという石材店様がいらっしゃいます。

その場合、合口はモルタルやセメントで接着し、目地もセメントで施工するのが一般的だと思います。

しかし、一部の石材店様では、目地をコーキングで施工しているようなのです。

それは――絶対にやめてください。

接着剤メーカーの方からも注意されていますが、セメントはアルカリ性のため、変成シリコンコーキングを劣化させる作用を持っています。

つまり、セメントとコーキングは非常に相性が悪いのです。

そうした方法を採用されている石材店様の中には、

「コーキングでしっかり目地をしているから大丈夫」とおっしゃる方もいますが、そんなことはありません。

お墓は構造上、隣り合う部分が多く、コーキングで完全に目地が入らない箇所が必ず存在し、そこへ雨水などが浸入していきます。

ですので、もう一度申し上げます。

セメントとコーキングの併用は絶対にやめてください。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。


石材問屋・大徳石材工業株式会社 大代賢太郎
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