都営霊園で犬島石サビ石叩き仕上の五輪塔を建墓しました

杉並区荻窪の石材問屋・大徳石材工業の大代(おおしろ)賢太郎です。

毎日とてつもない暑い日が続きますね。
前回の投稿が1年以上も前だったことに私自身驚きましたが…、せっかく素晴らしいお墓を建てさせていただいて、最後にはありがたいお言葉まで頂戴したので皆さまにも共有したいと思います。

それは、昨年11月に近所で八百屋を営んでいるお施主様が突然ご来店されたことがきっかけでした。

話をお伺いすると、お父様が亡くなり都営霊園に応募したところ当選し、五輪塔の建墓を考えていたので名の知れた石材店へ相談しに行ったそうです。
しかしその石材店の営業マンはカタログを持ち出しきて火輪(笠石)が幅広く、高さを意識したような現代型の五輪塔を一方的に勧めてきて、石材も中国材で、加工も中国加工、仕上げも磨き仕上しか提案してこなかったとのこと。

ただ、お施主様は以前から仏塔や石材に興味があったため、その提案に疑問を持ち、通勤路にある弊社を訪ねてこられました。

早速、展示している犬島石サビ叩き仕上の五輪塔をご覧いただき、拙いながら熱意を持って説明させていただいたところ、すぐに惚れ込んでいただきご依頼いただきました。
以前、こちらのブログでご紹介させていただいた通り、私自身、叩きの五輪塔が大好きで展示していたこともあり、共感していただけたことがとても嬉しかったです!

そして今回も制作していただいたのは、私に仏塔について熱心に教えていただいている、たま企画室・高橋晋也氏。
これだけニヤけた表情で五輪塔を解説していることからもその愛が伝わると思います(笑)
ちなみに今回、ご依頼いただいた五輪塔もこの香川県綾歌郡・圓通寺の五輪塔がベースになっています。
この高橋氏の凄いところは津々浦々で中世の仏塔を見て研究されているのでその膨大な知識はもちろんですが、自らが加工されることもあって加工道具ひとつひとつを特注で制作し、その使い方を職人さんに細かく指導していることです。なので、本当は加工している動画もご覧いただきたいのですが、企業秘密のためその様子しかご覧いただくことができません。
ただし、本気で叩き仕上の仏塔を検討していただけるようでしたらご案内しますのでご相談ください。
ということで、そんな拘りの犬島石サビ石の五輪塔が発注から4ヶ月でようやく完成しました。この佇まいとバランスの良さは、どこから見ても惚れ惚れしますね。
現代型と言ってよいかはわかりませんが私自身、上でも触れたように火輪が幅広い五輪塔をよく目にします。
そういった五輪塔も正面からの見たときの見た目はそれほど悪くないのですが、このように斜めから見たときに当然ながら対角線の長さが強調されるので非常にバランスが悪く感じていました。
では何故このような中世の五輪塔はバランスが優れているものが多いのか、さまざまな五輪塔を見るようになって気付いたのですが火輪と水輪(玉)の幅がほぼ同じで地輪(竿石)が気持ち幅広めなのです。

もちろんそれだけではありませんが、これ以上は深掘りすると長くなってしまうので今回は割愛します。
ただ、もし皆さまも五輪塔に興味を持っていただいて見るときには、色々な角度から眺めてバランスを気にしながら見ていただければと思います。

そして肝心の基礎工事もしっかりと準備をして進めました。
まずは掘削し、砕石を敷きつめ、ランマーで転圧していきます。
次にD13の鉄筋を20㎜スパンで配筋していきます。
水抜きと兼用で将来、ご遺骨が一杯になったときに土へ還せるように集水升も設置しました。
最後にコンクリートを流し込み、コテで平らに均したら基礎工事の完成です。
この後、シートを掛けて10日ほど養生を行いました。そして充分に養生を行いコンクリートがしっかり硬化していることを確認できたので、モルタルと免震に優れた変成シリコンコーキングで据付工事を進めていきます。
通常の磨き仕上げのお墓でしたらこのまま墓石まで変成シリコンコーキングで施工していくのですが、今回は叩き仕上の五輪塔ですので少し違う方法で施工をしました。
その違う方法とは、こちらの「ソフトファスナー・C」という墓石用ブチルゴムの使用です。

ブチルゴムは変成シリコンコーキングに比べ、粘り強さがあり、経年劣化も少ない、硬化型ではないので衝撃を吸収してくれるというのが最大の特徴です。
では、なぜこのブチルゴムを使用したのかを説明すると、このような叩き仕上をした場合、石の表面をノミで叩いているわけですからその時点で衝撃を与えてしまっているわけです。
そこに硬化型の変成シリコンコーキングを使用すると、地震があった場合などに石の表面ごと剥がれてしまうことが考えられます。
そのような状況を鑑みて、また叩きの五輪塔を複数建立されている石材店様にも相談をしソフトファスナーの採用を決めました。

ただ結構難しいのが使用量の調整です。
はみ出てしまったらペイントうすめ液で拭き取ることはできるのですが、叩き仕上の表面は細かな凹凸になっているため拭き取るのも容易ではありません。
慎重に調整しながら施工していきます。初めて使用する道具なので若干、悪戦苦闘しながらようやく完成しました。
外柵や墓誌も五輪塔に合うように水磨きで仕上げたので非常にマッチしていて、落ち着いた中にも存在感のあるお墓に仕上がったと思います。

その後、一周忌に合わせて開眼法要とご納骨法要をお手伝いさせていただいたのですが、お施主様は法要が終わった後も一時間ほどじいっとお墓を見つめていました。
そして数日経った後、改めて建墓のお礼に見えられたのですが、このように仰っていただきました。
「父が立っているように見えた」
「お墓を建てたことで心が豊かになった」

石材店様や私たち卸業者といったお墓に関わる者であれば、誰しもがお施主様やそのご家族に想っていただきたいことなので、この瞬間、本当に今回の建墓に携われてよかったと感じさせていただきました。

叩き仕上の五輪塔の魅力を説明させていただくことが難しいため、今回は弊社にて対応させていただきましたが、ちょっとでも共感いただき、このようなお墓を提供したいと考えている石材店様がいらっしゃればお手伝いさせていただきます。
サンプルやパンフレットもご用意していますのでお気軽にお問い合わせ下さいます様お願いいたします。

石材問屋・大徳石材工業株式会社 大代賢太郎
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